【農業の雑学】第8回目「なぜホウレンソウだけが広範囲で出荷禁止だったのか」

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どうも、標です。

さて今回、お話させていただくのは、

かつて、放射性物質により出荷できなくなった野菜たちのことです。

その中でも「ホウレンソウ」が広範囲で出荷禁止となっていました。

「なんでほうれん草だけが?」と思われた方がいると思います。

それについてお話しようと思います。


まず、ほうれん草そのものの説明をしなければなりません。

ほうれん草は冬に栽培する野菜です。

夏は、輸入物や北海道産のものが多くなります。

ほうれん草の発芽温度は5から20度くらいです。

ほうれん草は寒さに強く、温暖に弱いと言う特徴があります。

適温の最高温度は20度なので、

30度を超えるような夏に種まきをしたいときなんかは、

冷蔵庫に入れて発芽させる手法もあったりします。

発芽した後ほうれん草は、温度が15から20度の間で最も成長しますが、

寒さに強いので、これより低くても成長します。

生産性を求めるならハウス栽培で温度を上げます。

(ちなみに、15から20度くらいは、初春であれば

ハウスを張るだけでこの温度まで上がりますので、

特にヒーターなどはいりません。夜は温度が下がりますが、

夜に成長してもらうことはないので、

日中だけ20度であればよいのです。)

このように、低温でも栽培できてしまうので

冬でも特に設備がなくても作れます。

このように常に外気に触れる状態で栽培しているので

放射性物質が広範囲で検出されてしまったわけです。

では、ハウス栽培のものは助かったのではないか。

ところが、実はそうではありません。

ハウス栽培のものは収穫間近になると特別なことをします。

なんと、ハウスを取ってしまったり、または外の空気を循環させます。

いい環境で作っていたのに、冷たい空気に晒して台無しにするのはなんでか。

ほうれん草は気温5度を下回ると、成長が非常にゆっくりになります。

死滅するわけではないので、気温が上がればまた伸び始めます。

こうして、冷たい空気に晒し、成長を止めることによって、

ほうれん草は「低温ストレス」と言う反応を起こします。

(「低温ストレス」についてはまた次の機会に説明したいと思います。)

これによって糖度が上がり、

ビタミンなどの栄養が増幅し、とてもおいしくなります。

これを「寒締め」(かんじめ)と言います。

要は、身が引き締まると言った感じです。

また、成長が止まるので、育ちすぎないように急いで収穫する必要もありません。

(ちなみに、育ちすぎるとほうれん『草』ではなく、

『木』のように硬くなっていきます。)

このことから、ハウス栽培のものも、結局は外の空気に晒しますので、

検出されてしまうわけです。

しかし、今はもう大丈夫「らしい」ですが、

農家の人のことを考えると、

出荷ができるようになったことに関して言えば、

とてもよかったと言うふうに思います。

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