2011年11月アーカイブ

どうも標です。

今年も残すところあと1ヶ月となってしまいました。

来年の1月になると、農業の雑学を1年間やらせてもらったことになりますが、

時間と言うものは早いものです。

今年中にやっておきたいこと、

私はこれと言ってありませんが、

月末になればなるほど動けなくなってくるので、

今のうちから手を付けた方がいいですね。

あ、そういえば、そろそろアドヴォに年賀状お願いしないと!


さて、前回の続きからの病気の予防の話ですね。

前回はウイルス病の予防と言っていますが、間違えてます(笑)


・種苗の消毒

種苗は、あたりまえですが、病気に侵されていないものを選ぶことが大切です。

病気の中には、種子や苗で伝染するものがかなりあるので、種苗の消毒を行う。
(多分、たとみ農園のおコメで、1回だけお薬を使ったのはここじゃないですかね)

消毒には、一般的に薬剤が使われていますが、熱による方法もあります。

500度とか言うような加熱消毒ではありませんが。と言うか、

燃えてしまいますね。


・土の消毒と改良

土中の病原微生物が生き残っていて、汚染した土壌によって伝染する病気の場合、

例えば、トマトの青枯れ病や萎凋病、アブラナ科作物の根こぶ病、

メロンの壊疽斑点病などに対しては、太陽熱や蒸気による土の消毒、

土壌消毒剤によるくん蒸が行います。
(青枯れ病:「枯れ」と言えば茶色のイメージですが、これは緑色をしたまま枯れる病気です)
(萎凋病(いちょうびょう):こちらはイメージ通りの茶色になって枯れる病気です)
(アブラナ科:キャベツ・白菜・大根・ブロッコリー・ワサビなど)
(根こぶ病:名前の通り、根にこぶが付きます。栄養の吸収に支障が出来、生育を妨げます)
(壊疽斑点病:前回の「その7」で説明した壊疽モザイク病と同じような症状)

土壌殺菌剤
クロルピクリン剤?立ち枯れ病・つる割れ病・萎凋病・青枯れ病・疫病・紋羽病・黒根病・線虫類・ハリガネムシ・ネキリムシ・ケラ
臭化メチル剤?苗立ち枯れ病・白絹病・青枯れ病・萎凋病・つる割れ病・疫病・根腐れ病・線虫類・ネキリムシ・キュウリ緑斑モザイクウイルス病
カーバム剤?立ち枯れ病・菌核病・白絹病・疫病・ネグサレセンチュウ
ダゾメット剤?根こぶ病・つり割れ病・半身萎凋病・根頭癌腫病・線虫類

殺線虫剤
D?D剤?線虫類・ハリガネムシ・ネキリムシ・コガネムシ幼虫・青枯れ病・そうか病
オキサミル剤?線虫類・ミナミキイロアザミウマ
DCIP剤?線虫・コナダニ
ピラクロホス剤?ネコブセンチュウ・ネグサレセンチュウ・ネダニ
ホスチアゼート剤?線虫類・ミナミキイロアザミウマ

しかし、上記のような土壌消毒も畑の隅々まで完全に病原菌を死滅させることは

難しく、防除の中の手段の1つとして考えて対処することになります。

なお、消毒の後には、良質な堆肥を十分に入れて、土壌微生物の活動を

うながして、病原菌の繁殖を抑えると良いでしょう。

また、一定期間、畑に水を入れて、湛水状態においたり、

深耕や客土、土の入れ替えを行うなどの方法も有効です。


・輪作

土壌伝染性病害は、同一作物を連作すると、土の中の病原菌の生息が次第に

多くなって病気が多発するようになります。

こうなってしまった畑では、その病原菌に侵されにくい作物をいくつか選んで、

輪作を行うことが望ましい。

例えば、根こぶ病菌は、先ほど説明した通りアブラナ科作物に好んで寄生

するので、3年くらい玉ねぎ・レタスなどの他の作物を栽培すると、根こぶ病菌が

減ってくるので、またアブラナ科作物を作ることが出来ます。

逆に、玉ねぎ・レタスを育てている間は、それらに寄生する細菌が増殖している

ので、玉ねぎ・レタス視点で見てみれば、アブラナ科作物へ切り替える、

と言うことにもなります。

輪作の効果として具体的なデータをお話しますと、

キャベツの被害率90%の畑に輪作を施しました。

間隔は1年と2年と3年です。

1年後:90%→70%
2年後:90%→40%
3年後:90%→5%

ちなみに、3年の5%は翌年にまた同じものを作ると60%まで上がります。

つまり一番良い輪作方法は、種別が違う4種類の作物を毎年回すと、

毎年いいものが獲れる、と言うことになります。


・圃場衛星

発病した固体や果実、収穫が終わった後の作物の残骸、雑草などは

そのまま田畑に放置しておくと、病気の有力な伝染源となります。

収穫した、はいお終い、ではないんです。

農業体験などでは、「収穫をしてもらって土に触れ合っていただく」、と言うような

うたい文句はよくありますが、それは本当の農業体験ではないんですよね。
(私の個人的な意見ですが)

収穫をしたら、そこからもう来年の畑作りはスタートしているのです。

ちょっと話がずれてしまいましたが、

伝染源の処理は以下のように行います。

1.焼却・埋没:
病気になった作物は、早めに(その場でも)抜き取って焼却するか、
土中深く埋める。ただし、土壌伝染性病害は埋めることは出来ません。

2.堆肥化:
収穫終了後、作物の残骸・剪定枝・落ち葉などは丁寧に集めて堆肥にする。
ほとんどの病原菌は50から60度で短時間で死滅します。

3.中間寄生の除去:
圃場の近くにある中間寄生を伐採し、病気の恐れがある雑草を除去する。

4.嫌気的発酵(酸素に触れさせない発酵):
作物の残骸をプラスチックフィルムで密封して堆積する。
温度は上がりませんが、嫌気的発酵によって病原菌が死滅する。

5.ポリポットや支柱などの栽培資材は、消毒あるいは新しくする。


・栽培管理の工夫

よく見るマルチングや袋かけは、病気の伝染を防止する効果があります。

また、種まき時期をズラして発病を回避したり、

ハウスやガラス室などの換気を計ったり、

土壌pHや土壌水分の調整など、栽培管理を工夫することで、

病原菌の活動を抑えて病気を軽減することも予防法として大切です。

この中でpHと土壌水分はまた特別で、

pHが酸性寄りだとアブラナ科の根こぶ病・紫紋羽病・白絹病が

発病しやすくなり、アルカリ寄りだと、ジャガイモのそうか病・

サツマイモ立ち枯れ病・白紋羽病など発病しやすくなります。

じゃあ中性がいいのかと言うとそうではなく、作物を生育させるには、

土壌をその作物に適したpHにしてやらなければなりません。

これはスーパー講師こと伴野先生のお話にもありました。
(そういえば最近お会いしてないな・・・)

それが例えば酸性だとすると、pH値による根こぶ病の回避は難しい、

と言うことが言えます。

そして土壌水分は、これが多いと青枯れ病・軟腐病・根こぶ病・疫病・

ビシウム病・根くびれ病が発病しやすくなります。

これは、雨の日が続くことによっても同じことが言えます。


・抵抗性品種や台木の利用

作物には、品種によって病気にかかりやすいものとかかりにくいものとが

あります。

ちなみに、かかりやすい作物のことを、私はよく「○○はデリケートだから」

と言っていたりします。

病気の発生しやすいところでは、その病気に強い抵抗性品種を選ぶか、

抵抗性台木に接ぎ木すると良いでしょう。

また窒素室肥料をやりすぎると病気にかかりやすくなるので、

正しい量を施しましょう。

「多いことに越したことはねぇから」と言って適当にぶち込むのも

考えものと言うことです。


次回は病気の駆除と防除のお話です。

さらに次々回では、今まで目に見えないようなレベルの話をしていま

したが、そろそろ皆さんのイメージ通りの「害虫と農薬」の話になってくると

思いますんで、楽しみにしてて下さい。

どうも標です。

不定期更新に慣れてしまいそうです(汗)

11月6日にたとみ農園でお客様をお招きしての稲刈りがありました。

時期としてはかなり遅いですが、

始めの田植えも「ギリギリ」の「ギリ」だったので、

ちょうどよかったのでは。と言うことにしておきます(笑)

私自身の稲刈りは高校では機械で全てやってしまうので、

鎌を使っての刈り取りは小学生以来でした。

意外と覚えているもんで「手前に引く」と言うのが刈り取り方のコツです。

そういえば、田植えのときもそうでしたが、

たとみ農園の農業体験は山梨の観光もプランに入っているとかいないとか。

稲刈りのときは、甲州ワインのイベント、ワインツーリズムにご招待したようです。

両日とも天気に恵まれず富士山をお見せできなかったのが残念でなりません。

そして、刈り取ったお米ですが、

たとみ農園で販売が開始されているそうな。

品種は「ヒノヒカリ」です。

コシヒカリの親戚みたいな名前ですが、「日の光り」が名前の由来

になってます。

地方によっては特Aランクを獲得するほどの名米になっています。

ちなみに、全国のお米のシェアは第3位だとか。

今、ちょうど「害虫と農薬」の話をしているんで、

せっかくなんで話しておきますと。

たとみ農園のこだわりの「低農薬」。

このお米も例外ではなく、アイガモ農法をとったわけでもないのに、何トンと収穫出来たわけです。

これはすごいことです。

収穫祭でお客さんにも我々社員にもヒノヒカリが振舞われ、

今日まで特に具合悪くなるようなこともありませんし、
(あたりまえか)

とても立派なお米になっています。

市場に出せるレベルだと思いますが、

数が少なすぎると思うんで、

会社から販売している感じなんでしょうかね。

アドヴォネクストのホームページにでかく載ってるんで、

見てみて下さい。(見るだけならタダです(笑))

さて、前置きが長くなりましたが、

害虫と農薬その7、ウイルスによる病気のお話です。


・ウイルスの特徴

ウイルスが原因となる病気(ウイルス病)は、

野菜・果樹・草花など、あらゆる種類の作物に発生します。

病原体は食物ウイルスと呼ばれ、

形は棒状・球状・ひも状・長方形などさまざまなものがあります。

ウイルスの特徴として以下の3つが挙げられます。

1.大きさが普通の光学顕微鏡(学校の理科室にあるような顕微鏡)
では見えないほど小さい。

2.特定の植物に感染して病気を起こす性質がある。

3.科学の力を持ってしても人の手で育てることが出来ず、
生細胞内のみで増殖する。
つまり、何かに感染しないと生きていくことが出来ません。


・ウイルス病の種類

ウイルス病は病徴によって以下のように分けることが出来ます。

萎黄病(いおうびょう)?茎葉の一部または全体が黄色になる
萎縮病(いしゅくびょう)?節間がつまり、全体が萎縮する
モザイク病?葉、花弁、果実などにモザイク様の斑点ができる
(モザイク病はウイルス病の中でもよく見られる病気。
ジャガイモ、インゲン、キュウリ、トマト、チューリップ、スイセン等々たくさん)
壊疽モザイク病(えそもざいくびょう)?茎葉に壊疽性の(腐ったような)斑点ができる
葉巻病?葉が巻き上がる(※タバコのアレではありません)


・ウイルス病の伝染

ウイルス病の伝染は、普通、昆虫(アブラムシ、ウンカ、ヨコバイ等)、線虫、

カビなどからうつってくることが多いです。

その他、人の手や、作物同士の接触、種苗、土壌、接ぎ木でも伝染します。

また、表皮にできた目に見えないほどの小さな傷口から

液体によって伝染したり、花粉によって伝染する場合もあります。
(つまり、用もないのに畑に入ったり作物に触るなってことです。手や軍手に土がついていたら尚更です。)


・マイコプラズマ様微生物による病気

マイコプラズマ様微生物は、細菌の中でもっとも下等な微生物

と考えられています。
(「マイコプラズマ」と言うのは、真正細菌(別名:バクテリア)の一属で、
人間に感染すると肺炎を引き起こします。マイコプラズマ肺炎と言うらしいです。)

体には、細胞壁がなく、多形性の単細胞で直径0.1から1.0μmの球形や楕円形

のものが多いです。

この病気は、ほとんどがヨコバイからうつり、発病すると、茎葉が黄色、萎縮し、

細かく枝分かれするなど、ウイルス病の病徴によく似ています。

クワ萎縮病、エゾギク萎黄病、イネ黄萎病、ジャガイモ・サツマイモ・ミツバなどの

てんぐ巣病などがあります。
(てんぐ巣病とは、通常、一定の間隔で枝から若芽が出ますが、その法則が崩れ密集して出るようになります。
分かりやすいのは、樹木で言うと、高いところに鳥の巣のようなものが出来ているのがそうです)


・病気の防除

?予防?

作物の病気は気付かないうちに進行し、発病を確認したときには、

すでに病気がまわりの作物に伝染してしまっていることが大半です。

従って、病気の防除は発病する以前の予防に重点が置かれることになります。

病気の防除は以下の基本的な考え方にそって行うことになります。

1.作物自身の抵抗力を強める→抵抗性品種や台木の利用。栽培管理を適正に行う。

2.病原菌の活動を抑える→マルチング、袋かけ。温度や湿度の調節。土壌pH・水分の調整

3.病原菌の生息密度を下げる→種苗・床土の消毒。土壌・温室の消毒。
輪作、湛水(例えば、冬でも田んぼに水を張るようなこと)。圃場衛星。

?発症後?

駆除および蔓延の防止→薬剤散布


長くなりましたので、今回はここまで。

次回はこのウイルス病の予防を掘り下げた話からになります。